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介護士が食事介助を行う際に気をつけることと役立つ対応方法

食事介助は、介護業務のなかでも行う頻度が高い介助です。しかし「誤嚥性肺炎」や「窒息」といったリスクをともなうため、実務経験が少ない介護士のなかには食事介助に不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

本記事では「食事介助を行う際に気をつけること」と「役立つ対応方法」を中心に解説します。介助のコツを理解し、安全な食事介助に役立てましょう。

食事介助 を行う前にすること

利用者にとって食事は、必要な栄養素を摂取する、生活のリズムや季節感を感じる、日々の生活における楽しみといった意義があります。そのため食事の際には、リラックスして楽しんでもらうといった点を意識して介助する必要があります。

ここでは、食事介助を行う前にすること6つを解説します。

<声かけを行う>

まずは食事の時間だと認識してもらうために「これから食事のお時間ですよ」といった声かけを行います。事前に伝えて覚醒を促すことで、誤嚥のリスクが軽減できます。

<排泄を済ませる>

事前に声かけをして、食事前に排泄を済ませてもらいましょう。食事前に排泄を済ませることで、落ち着いて食事に集中できます。

また認知症の方のなかには、食事を中断して離席すると、置いてある食事が自分のものかわからなくなるといったケースがあります。混乱を避けて安心して食事してもらうためには、食事に集中できる状態を整える必要があります。

食事前に排泄の声かけをして、リラックスして食事に集中できる状態を目指しましょう。

<体調を確認する>

排泄の声かけだけでなく「気分不快はないか」「食欲はあるか」といった体調の確認もおこないましょう。「いつもより元気がない」「顔色が悪い」といった場合、体温・血圧・脈拍・酸素飽和度といったバイタルを測定します。

なお、各バイタルの基準値は以下のとおりです。

バイタルの種類   基準値
 体温       36.0~37.0度
 血圧       収縮期:120mmHg未満
         拡張期:80mmHg未満
 脈拍      60~80回 / 分
 酸素飽和度     96~99%

上記の数値を目安にして、必要に応じて医療職に報告しましょう。

<食事しやすい環境を整える>

落ち着いて食事に集中できる環境を整えましょう。テレビがついている場合、注意がそれて食事に集中できない可能性があります。

また、歌詞のある曲を流すとつい口ずさんでしまうため、誤嚥のリスクが高まります。そのため歌詞のない音楽を流し、リラックスできる環境を作りましょう。

<口の中や手を清潔にする>

食事をする前に口腔内や手を清潔にしましょう。食事前に口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎が予防できます。また舌苔を取り除くことで「味が感じやすくなる」「唾液の分泌量が増える」といった効果があります。

感染症予防の観点から手を清潔に保つことも大切です。認知症の方のなかには手づかみで食事される方もいるため、手洗いや消毒といった方法で手を清潔にしてから、食事を開始しましょう。

<唾液の分泌を促すトレーニングをする>

食事でのむせ込みや窒息を予防するには、唾液の分泌を促すトレーニングが効果的です。具体的には「パタカラ体操」「あいうえお体操」「早口言葉」といったトレーニングがあります。声かけを工夫して楽しみながら参加してもらうことで、毎日の習慣づけにつながります。

食事介助を行う際に気をつけること

続いて、食事介助を実際に行う際に気をつけること5つを解説します。

<姿勢 >

まず第一に「安全に食事できる体勢になっているか」を確認しましょう。利用者が食事をする際は「椅子に座って食事する場面」と「リクライニング車椅子で食事する場面」に分かれます。それぞれの注意点を解説します。

・テ ーブルと椅子で食事する場合

利用者がテーブルと椅子で食事する場合、椅子に深く腰掛けて足を床につけて安定させます。椅子の高さは膝が90度 に曲がる高さ、テーブルの高さは軽い前傾体勢で腕を乗せた場合に肘が90度 に曲がる高さが最適です。

なお通常の車椅子の場合、足はフットレストから床に下ろして足の裏が床につくようにします。フットレストに足を乗せたまま食事すると体勢が崩れやすく、食事に集中できなくなるリスクがあります。

・リクライニング車椅子で食事する場合

リクライニング車椅子で食事をする場合「利用者の身体状況」や「本人の希望」に合わせて、角度を45~80度 程度に保ちましょう。ティルト機能がある車椅子の場合、まずはティルトで角度をつけ、その後にリクライニングの角度を決めることでずれ落ちを防止できます。

<食事形態>

配膳された食事が利用者の身体状況に合っているかを確認しましょう。利用者の身体状況によって「食事が飲み込みづらい」「残存歯がなくて硬い食材がかめない」といったケースがあります。

このような状態で普通食を食べると、誤嚥性肺炎や窒息、食思の低下といったリスクがあります。そこで、嚥下機能が低下した方でも安心して食べられるのが「介護食」です。介護食には以下のような種類があります。

介護食の種類    特徴     適している状態
刻み食→普通食を刻んだ食事→歯がない方・噛む力が弱くても飲み込める方・口が大きく開けられない方
ソフト食→一度刻んだ食事をやわらかくまとめた食事→噛む力・飲み込む力が弱い方
ミキサー食→ミキサーにかけてペースト状にした食事→噛む力・飲み込む力が弱い方・消化器官が衰えてきている方
ゼリー食→ペースト状にしてからゼラチンで固めた食事→飲み込む力の低下により誤嚥のリスクが高い方

上記の表のように、利用者が摂取している食事によって特徴が異なります。そのため「本来ミキサー食を摂取する方が普通食を食べてしまった」といった場合、嚥下機能に適した形態でないため、最悪の場合その場で窒息してしまう可能性があります。

そのため食事前に配膳された食事形態を確認し、利用者が安全に食事できるように配慮しましょう。

<義歯>

利用者のなかには、口腔内の状態に応じて「部分義歯」や「総義歯」といった義歯を使用しています。義歯は食材を噛むのに欠かせないため、食事前に装着できているかを確認しましょう。

利用者のなかで「認知症がある」「義歯を装着することで違和感がある」といった方の場合、義歯を自身で外してしまうケースがあります。義歯が必要な方が装着していない場合「食事がしづらい」「誤嚥する可能性が高まる」といったリスクがあるため、必ず確認しましょう。

食事介助を行う際に役立つ対応方法

次の3つの対応方法を知っておくことで、実際に食事介助をする場面で役立ちます。それぞれのポイントを解説します。

<声かけの方法>

利用者のなかには「食事介助の拒否がある」「食事が進まない」といった方もいます。食事する意欲がない方に対して無理やりすすめた場合、利用者に負担がかかりストレスや不信感の原因となります。

この場合「少し時間を置きましょうか」「ゆっくり食べましょう」といった声かけをし、様子を見てから再度声をかけましょう。またスタッフが交代することで、食事の拒否が収まるケースもあります。ほかのスタッフと連携し、効果的な声かけをおこないましょう。

<コミュニケーションの取り方>

利用者にとって、食事は日々の生活のなかの楽しみの1つです。そのため、食事を楽しんでもらえるようなコミュニケーションを心がけましょう。事前に献立を説明することで、元の形がわかりづらいミキサー食やゼリー食であっても、食欲を刺激できます。

また、食事中も「利用者が好きな献立」や「得意料理」といった話題に触れることで、理解が深まります。ただし、利用者が「食べ物を噛んでいる」「嚥下しようとしている」といった状態で話しかけると誤嚥につながる可能性があります。

そのため、利用者の食事ペースやタイミングを考慮しながらコミュニケーションを取りましょう。

<スプーンの使い方>

食事介助でよく利用するスプーンの使い方にもコツがあります。スプーンでの介助時は「ご利用者の顎が上がらないように口元へ運ぶ」「食事を舌の中央あたりに乗せる」「やや上の方に引きながらスプーンを抜く」といった手順で行うと、スムーズに介助できます。奥まで入れすぎないように注意しましょう。

なお、口が開かない場合は「口元にスプーンを持っていく」「好きな食材から口に持っていく」といった方法もあります。具体的には冷たいアイスやゼリーといったものから食べ始めることで、そのほかの食事も食べ進められる可能性があります。

また、自力摂取される方の場合、利用者の身体状況に応じてスプーンを選ぶ必要があります。たとえば「麻痺などで握力が弱い」「リウマチなどで手の指が痛む」といった場合、持ち手が太いスプーンを用意することで自力で食べやすくなります。

食事介助時は、正しくスプーンを使って安全に介助しましょう。そして自力摂取される方のスプーンにも配慮し、残存能力が活かせるように支援しましょう。

身体状況に応じた食事介助の方法

利用者のなかには「意思疎通が困難」「寝たきり」「片麻痺がある」といったさまざまな状態の方がいます。身体状況に応じて方法を変えることで、安全に食事介助ができます。それぞれの状態ごとに介助方法を解説します。

<意思疎通が困難な方>

認知症が進行した方のなかには、意思疎通が困難な状態の方もいます。認知機能の低下により「箸やスプーンの使い方がわからない」「目の前にあるのが食べ物だと認識できない」といったケースがあります。

認知症の方に食事介助をする際は、食事をスプーンに乗せた状態で利用者に持っていただきましょう。そして「口元にスプーンを運ぶジェスチャーをする」「利用者の手にスタッフの手を添えて口元に運ぶ動作をする」といった動作が思い出せるような工夫をすることで、ご自身で食べ進められる可能性があります。

また認知症の方のなかには食事の品数が多い場合、すべてを認識できない方もいます。そのため複数の皿に分けるのではなく「コンパクトに配膳する」「ワンプレートにする」といった工夫をすることで、食事に集中できる可能性があります。

認知症の症状には個人差があるためさまざまな対応方法を試し、その方に適した介助方法を見つけましょう。

<寝たきりの方>

ベッドに寝たきりの方の場合、食事の体勢に注意が必要です。まずはベッドの頭部側を約60度程度 にギャッジアップします。そして利用者の膝下、腕の下、足底などにクッションを当てて、身体が安定するようにサポートします。

寝たきりの方の場合、身体機能が低下しているケースが多いため「バランスよく食事していただくこと」を意識してペースや量を調節します。

食事を終えたら口腔ケアを実施し、誤嚥を防ぐために義歯は外したままにします。ベッドの頭部側を食後すぐに下げてしまうと「食べ物が胃から逆流する」「むせ込みの原因になる」といったリスクがあるため、食後1時間程度は頭を上げたうえで楽な体勢を保ちます。

ご本人の意思を確認しながら体勢を整え、食事を楽しんでいただきましょう。

<片麻痺がある方>

脳梗塞の後遺症などが原因で片麻痺がある利用者の場合、患側・健側に注意して介助しましょう。まずスタッフは、利用者の健側に座ります。そして嚥下機能に問題のない方の場合は、食べ物を口の中の中央に置きます。

一方、嚥下機能や口腔機能が低下している方の場合は、口の健側に食べ物を運びます。そうすることで利用者は咀嚼・嚥下しやすくなるため、食事しやすくなります。

患側から介助してしまうと「食べ物が口から出てしまう」「口腔内に食べ物がたまる」といった状態になるため、誤嚥のリスクが高まり危険です。介助中も「食べ物が嚙めているか」「飲み込めているか」といった点を確認しながら進めましょう。

なおご自身で食事を召し上がる方の場合「持ち手が太いスプーン」や「食べ物がすくいやすい自助食器」「滑り止めシート」などを使うことで、食事しやすくなる可能性があります。利用者に必要な介助量に応じて「必要な介助」や「福祉用具の導入」を検討しましょう。

まとめ

食事は利用者の生活において、大きな楽しみの1つです。介護スタッフが安全な介助を心がけることで、利用者の不慮の事故が防止できます。介助時に気をつけることや身体状況ごとの介助方法を理解し、安全に食事介助をおこないましょう。

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